補聴器購入は技術ある店で 耳に合わせ調整大切
六月六日は「補聴器の日」。補聴器は繊細な器具で、使用環境やその人の耳の状態に合った調整をしないと、十分な満足感を得るのは難しい。補聴器による聞こえの改善が困難な人もいる。各地の消費生活センターには「思ったほど聞こえない」などの相談が増加。国民生活センターは、専門知識や技能のある店で購入するよう呼び掛けている。 (佐橋大)
「調子はどうですか」。あいち補聴器センター(愛知県岡崎市)店長で認定補聴器技能者の天野慎介さん(32)は五月、三カ月前に補聴器を買った同県豊橋市の加藤悟子さん(78)の自宅をサービスで訪問した。認定補聴器技能者は、補聴器に詳しい販売員の認定制度だ。
加藤さんは、家業の和菓子製造を手伝っている。金属の器具のぶつかる音が耳に響くという。「高い音が少しうるさい」。要望を聞き天野さんは、パソコンと専用機器を使い、その場で補聴器の調整を始めた。
最近の補聴器はほとんどがデジタル式で、音の周波数別に、どの程度音を大きくするかを微妙に調整できる。程度の差はあるが、騒音を低減する機能もついていることが多い。
加藤さんの使う補聴器もデジタルで、音を八段階に分けて、増幅している。天野さんは、高い音の音量を抑える調整をし、加藤さんに試聴してもらった。
「あまり抑えすぎるとサ行の音が聞きにくくなってしまう」と天野さん。加藤さんは「前よりいいね」。天野さんは補聴器の掃除や、保管方法の指導もした。
訪問後、天野さんは「調整して初めてお客さまに合った補聴器になる。使い始めた後に感じる違和感にも対応しないと」と、販売後のメンテナンスの大切さを話した。
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日本補聴器工業会によると、二〇一二年の調査で、難聴と思っている人は約千四百万人いて、補聴器を使っているのは約二百万人。高齢化に伴い、いずれも増えているとみられる。
国民生活センターによると、補聴器に関する相談は年々増加。一三年度は五百九十一件で、〇三年度の二百三十七件に比べ約二・五倍まで増えた。
埼玉県の七十代男性は昨年、五万円の補聴器を購入したが、聞こえは全く改善しなかった。返品を希望すると、店は「交換ならできる」と言って、より高額な二十五万円の補聴器を勧めた。勧められるまま、男性は購入したが、やはり全く聞こえず、地元の消費生活センターに相談した。
大阪府の八十代女性は昨年、病院に出張販売に来た事業者と補聴器の契約をした。購入前に試した補聴器では、まあまあ聞こえたので、購入したが、その後、半年間に七、八回店で調整したが聞こえないという。
同工業会の八嶋隆事務局次長は「耳の聞こえにくさは個人差があり、使用環境でも適した補聴器は異なる」と指摘。補聴器で聴力が回復しない場合もあるので、購入前に専門医に耳の状態を調べてもらうことがいいという。
国民生活センターは「耳のよく聞こえない人が、一人で販売店に行き、補聴器をよく理解しないまま、購入している場合もある。店側にも、知識や技能がなく、アフターケア体制が不十分な場合もある」と指摘。専門知識を持つ販売員がいて、きめ細かい調整が期待できる店を選び、家族らが同行するよう助言する。
障害者や高齢者の福祉用具の普及啓発を図る公益財団法人テクノエイド協会は、認定補聴器技能者がいて専門設備がある店を「認定補聴器専門店」として登録し、協会のホームページ(協会名で検索)で公開している。
<補聴器の日> 日本補聴器工業会と日本補聴器販売店協会が1999年、定めた。「6月6日」の数字が、片方を裏返すと両耳の穴のような形になることなどにちなんでいる。
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