糖尿病性ケトアシドーシスが脳に一時的な変化を引き起こす(2014.6.5掲載)

1型糖尿病診断時に糖尿病ケトアシドーシス(DKA)を発症していた児では、脳室で一時的な変化が起こっていることが、オーストラリア、王立子ども病院(ビクトリア)糖尿病サービス部長Fergus Cameron氏らの研究によって示された。「Diabetes Care」オンライン版に5月22日掲載された論文によると、変化は最初の1週間ほどで消失していたが、少なくとも半年間は記憶力や注意力の減退という影響が続いていたという。

Cameron氏は、「1型糖尿病診断時にDKAも認められた児の脳では、灰白質の萎縮および白質の腫脹が認められた」とし、軽微な変化であっても、学習能力に高いレベルで影響を与える可能性はあるとしている。

JDRF(前・若年糖尿病研究基金)によると、米国では毎年約3万人の成人および児が1型糖尿病と診断されているが、近年は発症数が急増している。

1型糖尿病は、免疫システムが誤ってインスリン産生細胞を破壊する自己免疫疾患だ。発症するとグルコースをエネルギーに変えるインスリンは絶対的に欠乏する。治療が遅れると、身体はグルコースに代わるエネルギー源として脂肪を燃焼し始める。その副産物として生成される脂肪酸がケトン体だ。過剰に生成されたケトン体は身体に毒となり、致死性の疾患であるDKAを引き起こす。

Cameron氏によると、新規に1型糖尿病と診断される患者の20~30%は発症時にDKAを伴っているが、発症から何年も経った患者であっても、インスリン注入など糖尿病管理に何らかの問題が生じればDKAを起こしうる。

研究では、6~18歳で1型糖尿病と新規に診断された児のうち、診断時にDKAを起こしていた36例と、非発症の59例を対象として、1型糖尿病診断から2日後、5日後、28日後、6カ月後に脳MRIの撮影を行った。同時に記憶力と注意力に関するテストも行った。

その結果、DKAを発症していた児では、灰白質が縮小し、白質領域が腫脹していることがわかった。この変化は速やかに消失したが、脳の変化があった児では6カ月後まで、記憶の想起遅れや維持力の欠乏、注意力欠如といった影響が認められた。

「記憶力や注意力の変化は、日常生活で患者本人や教師が気づくかどうかというわずかなレベルだが、常に新しい知識や技術を獲得している小児期においては憂慮されるべきものだ」とCameron氏。DKAの再発によってダメージが累積されることも懸念されるうえ、過去の研究からは、より長い期間、影響が持続することが示唆されると付言している。

JDRFの療法副部長であるAaron Kowalski氏は、糖尿病が思考や論理に影響を与えるのかという疑問に対するデータは示されていないとし、患者は心配しすぎるべきではないとしながらも、さらなる研究の必要性を指摘。特にDKAの予防が必要として、「管理の改善やより良い方策、医師の教育も必要だ」と述べている。

1型糖尿病の代表的な兆候および症状は次のとおり。これらのうちいくつかが認められる場合、医師の下で簡易血糖検査を行えば1型糖尿病は診断できる。

・異常な口渇および飢餓感
・多尿。普段夜尿しない児が就寝時に度々もらすといったケースを含む・突然の体重減少・気分の変調・傾眠・視覚の変化・果物のような口臭
(HealthDay News 5月23日)

http://consumer.healthday.com/kids-health-information-23/adolescents-and-teen-health-news-719/brain-changes-may-accompany-type-1-diabetes-diagnosis-in-kidsin-kids-688107.html

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