糖尿病が心血管に与える悪影響は男性より女性で大きいことが、オーストラリア、クイーンズランド大学クイーンズランド臨床試験・生物統計センター長のRachel Huxley氏らが行ったメタ解析で明らかになった。

女性では男性より40~50%、糖尿病による心血管リスクが高いという今回の結果は、女性糖尿病患者では男性糖尿病患者に比べて心疾患による死亡リスクが約50%高いとする過去の研究結果を裏付けるものになる。

Huxley氏らによると、この性差は男性では女性より早期に、より肥満が軽症な段階で本格的な2型糖尿病を発症しがちなことに起因しているという。男性では糖尿病診断が早い分、より早期から積極的に糖尿病の治療、そして高血圧や脂質異常といった心リスクの治療が行われるためだ。

一方、女性では本格的な2型糖尿病に至る前に心リスクが増悪している傾向があるという。論文で引用されている過去の研究では、女性が糖尿病と診断される際の肥満指数(ボディ・マス・インデックス:BMI)は男性より2単位高いとのデータも示されている。

「Diabetologia」オンライン版に5月22日掲載された今回の論文によると、研究では1966年~2013年に行われた64報の研究から85万人分以上の健康データをメタ解析した。1型糖尿病か2型糖尿病かは精査しなかったが、対象の大半は2型と考えられた。

分析の結果、対象のうちおよそ3万人で何らかの心疾患が認められた。男女に分けて心リスクを検討したところ、女性糖尿病患者では非糖尿病の女性より、およそ3倍心疾患リスクが高いことがわかった。男性では糖尿病患者の心リスク増大は非糖尿病患者の2倍を少し超える程度だった。

同研究では、女性の糖尿病と心疾患の関連を認めたが、その因果関係は証明していない。

この結果について、米Integris Health病院(オクラホマ市)女性健康・地域社会関係部診療部長であり、米国心臓協会(AHA)スポークスマンのMary Ann Bauman氏は、「女性が糖尿病と診断されるときにはかなり進行していることが示唆される」と述べている。

一方、米レノックスヒル病院(ニューヨーク市)循環器ケアユニット准部長のTara Narula氏は、慢性疾患の診療では性差を考慮する必要性が強く示唆されると指摘。「男性と女性を一緒くたに扱う時代はもう終わった。女性についてはそのリスク因子を考慮したユニークな存在として見るべきであるし、糖尿病あるいは心疾患についてはより積極的にスクリーニングと治療を行う必要がある」と述べる。

両氏はまた、女性では糖尿病前症の段階からより積極的な治療が行われる必要性についても指摘する。糖尿病前症では、インスリン抵抗性は生じつつあるが、糖尿病と診断するほどの高血糖には至っていない。しかし、糖尿病前症の状態で長期間過ごすと心血管への負担となり、血管壁の硬化や狭窄を引き起こす可能性がある。「糖尿病前症の段階からより詳細に、より積極的に診察する必要がある。心疾患の多くは予防可能だ」とBauman氏。

Huxley氏らは、糖尿病前症の女性へのスクリーニングの増強と同時に、糖尿病ハイリスクの女性に対しより厳格な追跡の実施を推奨している。(HealthDay News 5月22日)

http://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/diabetes-management-news-180/diabetes-may-be-bigger-threat-to-women-s-hearts-than-mens-study-688094.html

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